先日来、自分の印象的だったプロジェクトを思い出している。
システム開発以外の「WEBサイト制作」で一番成功した事例である。
クライアントは、公認心理師として、人の深い悩みに寄り添う専門職の方。確かな専門性に加えて、「特定の言語」で対応できることが、何よりの強みだった。
狙いは明確だった。都会で暮らす留学生たち。異国の街で、文化の違いや言葉のニュアンスの違いに苦しみながら、誰にも本音を打ち明けられずにいる人たち。相談相手を選ぶなら、資格を持つプロで、しかも母国語で話せる相手がいい——そんな切実な需要に対して、応えられる場所は意外と少なかった。ニーズは確かにある。なかなか日本の資格は外国人が取得することは難しい。大学院を卒業して論文もきちんと書き上げた彼女だからこそ考えられたビジネスモデルだ。
当時はまだ言葉にしていなかったが、今振り返ると、このプロジェクトで私たちがやっていたことは、後に「WITS整理法」として体系化していく考え方そのものだった。経営の意思(Will)、組織の知恵(Intelligence)、仕事を支えるツール(Tools)、外へ伝える言葉(Story)——この4つを一つひとつ整えていくプロセスだった。
Will:毎週Skype会話して、クライアントの意志を理解する。
このプロジェクトの原点は、当時のSkypeでの、長い対話にある。
「どうすれば、本当に困っている人に届くのか」 「どんな環境なら、安心して心を開いてもらえるのか」
何度も何度も雑談もしたり、実際に会って話をして彼女の構想を理解していった。
私の一番大切にしているのは、このプロセスである。
これは単なる打ち合わせではない。クライアント自身の中にある「経営の意思」——何を大切にし、誰のために、どこへ向かうのか——を、対話を通じて掘り起こす作業だった。そして何より印象的だったのは、その過程で見えてきたクライアントの圧倒的な「覚悟」だった。
Intelligence:現場の知恵を、環境設計に落とし込む
マーケティングの定石では、よく「最初は小さく作って様子を見よう」と言われる。だが今回は、まったく違った。
Webサイトは、最初から日本語版・外国語版の両方を作り込む。それだけではない。実際に相談を受けるリアルな相談室にも足を運び、実際の相談シーンをイメージしながら写真も撮ったりしてイメージをつかんだ。
画面の中の設計だけでなく、現場に立って初めて見えてくるものがある。相談に来る人がどんな気持ちでドアを開け、どこに座り、どんな空気の中で話し始めるのか——それを想像しながら現場を見ることで、Webサイトの言葉遣いや構成にも、雰囲気を落とし込むことができた。
Tools:画面の中とリアルな空間、両方を土台として整える
画面の中だけでなく、現実の空間まで意識する。毎週のSkypeで練り上げた戦略を土台に、オンラインの情報設計に、現場で感じ取った空気感までを反映させる——一切妥協しない。
実際、500km離れた場所まで、出張のついでに足を運んだこともあった。本物を目の前にすることで、頭の中で描いていたイメージがさらに深まり、膨らんでいく。そうやって固めたイメージを、最終的にHP(Webサイト)というツールに落とし込んでいった。内容は、大したことはない。
要は、どんな人が対象者で、どんな経験でどんな顔をした人が、どんな方法で、価格はいくらで相談に
のってくれるのか?とアクセス方法はどうしたらよいのかということを記載しただけのものである。
サイトインデックス登録、タイトル名、ディスクリプション、タグは、何度も検索したりして改善する。当たり前のことを当たり前にやる。ここが大切。検証も必要
Story:口コミという形で、言葉が独り歩きを始めた
ネットとリアル、両方の土台が完璧に整った瞬間、ご本人たちの営業力と情熱が一気に爆発した。
準備に余念がないから迷いなく自信を持って提案できる。しかも留学生のコミュニティは、思っている以上に狭く、そして濃い。「あそこに行けば、母国語で、ちゃんとした資格を持つ人が話を聞いてくれる」——その評判は、SNSや友人づてに驚くほどのスピードで伝わった。口コミが口コミを呼び、留学生コミュニティを通じて、営業展開が広がる。
これは、私たちが仕掛けた宣伝ではない。土台がしっかりしていたからこそ、クライアント自身の言葉と評判が、外へ向けて自然と伝わっていったのだ。実際にその成果を目の当たりにしたとき、心の底から「本当によくできているな」と感銘を受けた。
本当にすごいのは、本人の「個の力」
本当にすごいのは、そのアイデアと想いを持って自ら突き進んだ、クライアントご本人だ。
「都会で悩む留学生」という、誰も本気で埋めに来ていなかった市場を見抜いたビジネスモデル。準備が整った瞬間に、迷わず勝負に出た営業力。そして、小さく始める安全策を選ばず、最初から本格的な環境に踏み込んだ覚悟。この3つが、同時にそろっていた。一つでも欠けていれば、ここまでの広がりは生まれなかっただろう。
私たちが行ったことは、ただ一つ。そのビジネスモデル・営業力・覚悟が100%発揮されるように、Skypeで対話を重ねながら、Will(意思)・Intelligence(知恵)・Tools(ツール)・Story(伝える言葉)——「前提」と「全体のデザイン」を、一緒に整えることだった。
これは今、私たちが「WITS整理法」と呼んでいる考え方の原点だ。経営の意思、組織の知恵、仕事のツール、外へ伝える言葉——この4つを整えれば、後は行動あるのみ

