もう12年前、ある商工会議所の起業セミナーで「身の回りで見る成功の秘訣」というテーマでお話しする機会がありました。今回はその中から、不況期をどう乗り切るか、そして自社の勝てる戦場をどう見つけるかについて、実際に見聞きした事例を交えてご紹介します。
好不況の波は「必ず来るもの」として計画する
ある鋼材メーカーの社長からお聞きしたお話が印象的でした。この会社では、好況・不況の波が必ず来ることを前提に経営計画を組んでいるそうです。
考え方はシンプルで、不況期には土地の価格も下がり、設備も安く手に入る。だからこそ不況期は「仕込みの時期」と捉え、好況期には操業度を上げてしっかり利益を出す。波が来ることを恐れるのではなく、波が来ることを織り込んで動く。当たり前のようで、実践できている会社は意外と少ないものです。2代目社長で若いころから存じ上げていますが、いつも印象的なことを教えて下さいます。
一方で、波に飲まれかけながらも立て直した例もあります。ある機械商社は、創業後IT情報発信を武器に5年ほど順調に業績を伸ばしていましたが、リーマンショックの煽りを受けて一気に低迷しました。しかし、この会社が立派だったのは、不況の間をただ耐えるだけで終わらせなかったこと。同業者間の情報網をこの時期に確立し、それが今の業績回復の土台になっています。苦しい時期こそ、次の好況に向けた「仕込み」ができるかどうかが分かれ目になるのだと思います。
例えば、専門商社ばかりが投稿できるサイトと契約して、マメに商品投稿をしたり、電話代はすごいそうです。韓国や台湾の商社の方ともガンガンお話をされています。
情報を如何にストックしていくか、これはインターネット情報だけで得られるものではありません。
自社の強みを分析し、勝てるニッチ市場を狙う
不況に強い体力づくりと並んで大切なのが、「戦場を間違えない」ことです。
あるソフト会社は、CT・MRIなどの撮影装置をコンピュータと接続するという、かなり専門性の高いニッチな分野で事業を展開しており、不況期でも売上が安定していました。他社が途中で投げ出したソフトウェアをあえて完成させたり、短納期の案件にも柔軟に対応したり。綱渡りのような場面もありながら、外部の同業者とうまく連携し、専門知識を持つ外部ブレーンを効率よく活用して情報収集する体制を作っていたことが、安定の背景にあります。新しい技術にも積極的に取り組み、時代に応じて少しずつ業態を変化させ続けているのも特徴的でした。
もう一つ、木工所の事例も参考になります。20数年前、同業者に誘われて中国を視察したことをきっかけに、中国への発注を徐々に増やしてきました。狙ったのは、ゼネコンがあまり受けたがらない小口の物件。相手の予算に応じて国内業者と中国業者を使い分けることで、他社が手を出しにくい隙間を着実に埋めていきました。
面白いのは、この会社が留学生を社員として採用し、その現地での人脈を積極的に活用している点です。留学生は野心を持って自分の人脈を駆使してくれる。多少うまくいかないことがあっても、「トータルで成功すればOK」という寛容さと忍耐強さを経営側が持っていることが、この仕組みを支えているように感じました。
さらに彼がすごいなと思えるところは、中国は、既に工賃が高くなっているので東南アジアにシフトしているところです。営業スタイルを進化させて、他社をすでに退職した営業さんの知恵を借りて売り先を増やしているところです。但し、競業避止義務には十分配慮しています。
見えてきた共通点
これらの事例から見えてくるのは、次の2点です。
- 好不況の波を「想定内」として、平時から会社の体力を整えておくこと
- 自社の強みを冷静に分析し、自分たちが勝てるニッチな市場を見極めて、そこに集中すること
派手な戦略ではありませんが、地に足のついたこの2つの積み重ねが、長く生き残る会社の共通点なのだと思います。

