【WITS整理法の原点】会社全体で業務フローを整理して、システムを作り意外な事実が見えてきた。(完結編)

システム開発
WITS事例まとめ

工作機械部品や工作機械の組立加工など、金属加工を手がける鉄工所での話である。

前編・後編を振り返る

  • 前編では、半年かけて模造紙で業務フローを作り、さらに半年かけて一人でプログラムを開発し、稼働後の二週間は工場つきっきりでマスタ登録と入力チェックを続けた話を書いた。
  • 後編では、その積み重ねの先にたどり着いた発見を書いた。「儲けさせてもらっている」と思われていた取引先が、工程ごとの実際原価を積み上げてみると、実は赤字だった。感覚と数字が逆を向いていたその事実は、数年後、その取引先が倒産したことで、より重みを増して思い出されることになった。

今回は少し趣向を変えて、あの体験を「WITS整理シート」の形に整理し直してみたいと思う。私が普段、クライアントの会社を見るときの「四つの視点」に、自分自身の原点となった経験を当てはめてみる。

W(Will)経営の意思

  • 担当者ごとに違っていたルールや業務の流れを整理したい
  • 現場の人たち自身で、自分たちの仕事をわかる形にしたい
  • 製品ごとの予定原価と実際原価を把握したい
  • そこで得られた数字を経営判断に使いたい

経営者が目指していたのは、単に「システムを導入すること」ではなかった。

担当者によってバラバラだった仕事のやり方や、整理されていなかった業務の流れを一度みんなで整理し、誰が見てもわかる形にしたい。書籍やマニュアルに頼るのではなく、予定工数や予定原価だけでなく、実際にどれだけ時間と費用がかかったのかを製品ごとに把握し、経営の判断材料にしたいと考えていたのだ。

だからこそ、最初からシステムを作り始めたわけではない。まず現場の人たちが参加し、自分たちの仕事の流れを整理するところから始めた。半年間の定例ミーティングは、そのための時間であった。

仕事の流れとルールを整理し、そこから得られる数字を経営に生かす。そのための仕組みを、自分たちで作っていく。それが、この取り組みの出発点だった。

I(Intelligence)組織の知恵と外部の知識

  • ベテラン社員が持っていた仕事の進め方や判断基準
  • 工程ごとに異なる段取りや作業方法
  • 担当者の頭の中にあった受注から出荷までの流れ
  • 工業簿記や原価計算の知識

業務を整理しようとすると、会社の中にはすでに多くの知恵があることがわかる。ただ、その多くはマニュアル化されているわけではなく、人の頭の中にあった。

誰が、いつ、何を見て判断しているのか。次の工程には何を渡すのか。予定工数はどう考えているのか。例外が起きたときにはどう処理しているのか。 そうしたことを一つずつ聞き出しながら、模造紙に業務フローを書いていった。

ここで大切だったのは、外部から「正しい業務フロー」を押し付けたのではなく、現場の人たちが持っていた知恵を引っ張り出し、みんなで確認しながら整理していったことだ。

一方で、現場の知恵だけでは足りない部分もあった。製品ごとの採算をきちんと数字で捉えるには、原価計算の体系的な知識が必要だった。そこで私は専門の知識(工業簿記)を学びに行った。

直接原価計算や個別原価計算を勉強し、それをこの鉄工所の現場にどう当てはめるかを考えた。「現場の経験から生まれた知恵」と「外から学んだ原価計算の知識」。その両方を組み合わせながら、仕組みを作っていったのである。

T(Tools)仕事を支えるツール

  • 受注から工程手配、発注、作業実績、出荷、仕入、販売、原価までをつなぐシステム
  • 工程ごとのバーコード管理
  • 予定工数・予定原価と実績データの収集
  • 製品別の実際原価の把握
  • 週1回の工程会議で使う資料の自動出力

半年かけて業務フローを整理したあと、その内容をもとに、さらに半年かけて私がシステムを開発した。

ここでシステムは、業務を変えるために突然持ち込まれた「異物」ではない。みんなで整理した仕事の流れと、そこで必要になった原価計算の考え方を、実際に動く仕組みに置き換えていったものだった。

予定工数や予定原価を持ち、作業実績を工程ごとに集め、製品ごとの実際原価を計算する。そうして初めて、「この製品はいくらで作れているのか」「この仕事は本当に利益が出ているのか」を数字で捉えられるようになった。

そして、システムが動き始めてからも終わりではなかった。稼働後の二週間は工場に張り付き、マスタ登録や入力内容を確認しながら、実際の仕事に合うように泥臭く調整していった。

ツールは作れば終わりではない。現場で使われ、正しいデータが蓄積されて初めて、経営に役立つものになる。

S(Story)見えてきたことを、経営の言葉にする

  • 製品ごとの予定原価と実際原価を比較できるようになった
  • 「儲かっているはず」という感覚を数字で確かめられるようになった
  • 工程ごとの実績が見えることで、仕事の採算がわかるようになった
  • その結果、取引先ごとの「本当の利益構造」まで見えてきた

システムが動き、実績が蓄積されてくると、それまで感覚でしかわからなかったことが数字で見えるようになった。

その中で特に印象に残ったのが、「儲けさせてもらっている」と思っていた取引先が、実際原価を積み上げてみると赤字だったことだ。これは単に「原価管理ができた」という技術的な話ではない。

現場で入力された一つひとつの実績が、製品別の原価になり、取引先別の採算になり、最後には経営判断につながる「ストーリー(物語)」になったのだ。

業務を整理すること、現場の知恵を形にすること、必要な知識を学ぶこと、システムで数字を集めること。そのプロセスを経て初めて、「この仕事は本当に儲かっているのか」という経営の問いに自信を持って答えられるようになった。

まとめ:四つを整理すると、仕事と経営がつながって見える

こうして振り返ってみると、W・I・T・Sの4つは、きれいに一つずつ順番に進んだわけではない。

経営者の考え(W)をもとに現場の仕事を整理し、現場から出てきた知恵(I)をもとに業務フローを直す。その途中で必要な知識があれば学び、それをシステム(T)に落とし込む。実際に使ってみると、また新しい問題や気づきが出てくる。そして、蓄積された数字を経営(S)に返していく。

まさに、この繰り返しのサイクル(巡回)であった。

しかし、いま振り返ると、そこには確かに「経営の意思」「組織の知恵と外部の知識」「それを支えるツール」、増して「数字から見えてきた経営の言葉」があった。システムを作ることだけを考えていたら、ここまでは到底見えなかったと思う。

「仕事を整理し、人の知恵を引き出し、足りない知識は学び、仕組みにして、経営につなげる。」

私がいま「WITS整理シート」としてお客様に提供しているサービスは、考えてみれば、あの頃からずっとやってきたことの結晶なのかもしれない。

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