昨日、フルートのコンサートに足を運んだ。
「知る」から始まるコンサート
プログラムの構成が見事だった。
まずフルートという楽器そのものの紹介から始まる。5種類の違い、音色の違い、短いフレーズを実際に聴かせてくれる。「知る」ところから入るのだ。
ピッコロ、フルート、アルトフルート、バス・フルート、コントラバス・フルート
そのうえで後半は、「カルメン」のストーリーを解説しながら、その代表的なフレーズを演奏していく。
これが、驚くほどわかりやすかった。
楽器の基礎知識という「土台」を先に渡されているから、後半の演奏を聴いたときに、耳が自然と細部まで追いかけていく。物語を知っているから、フレーズひとつひとつに意味が乗って聞こえる。
何も知らずに演奏だけを聴くのと、こうして順序立てて聴くのとでは、同じ音楽でもまったく違う体験になる。
これはまさに「コンサートデザイン」だと感じた。聴き手の理解がどう積み上がっていくかを設計してあるコンサートは、伝わり方が段違いだった。
1つだけ残念なこと
ただ、ひとつだけ残念な点があった。
出演者の一人が、おそらく演奏に相当な自信を持っているのだろう、音がほかの奏者に比べて明らかに大きかった。技術的には申し分ないのだと思う。
だがその「大きさ」が全体のバランスを崩し、せっかく積み上げてきたコンサート全体のデザインを、少しだけ棄損していた。
一人ひとりの技量が高いことと、全体として調和が取れていることは、まったく別の話なのだと改めて感じた。
個の力と、全体のデザイン
この構造は、会社の中でもよく見かける。
優秀な人材が一人いる。仕事も速いし、成果も出す。本人に悪気はまったくない。むしろ自信を持って全力でやっているだけだ。
ところがその「強さ」が突出しすぎると、チーム全体のリズムやバランスを崩してしまうことがある。周囲が委縮したり、逆に置いていかれたり、あるいは「その人がいないと回らない」状態になったりする。
個の能力を伸ばすことは大切だ。しかし経営やチームづくりにおいて本当に問われているのは、その能力を「全体の中でどう響かせるか」という設計のほうだ。どんなに音色が美しくても、まわりを消してしまっては、演奏全体としては未完成になる。
コンサートの前半で「楽器の基礎」を丁寧に伝えていたように、組織においても、個々の役割や強みを事前に共有し、全体としてどんな音を鳴らしたいのかを揃えておくことが、調和への近道なのだと思う。
まとめ
技量は、それ単体では評価できない。全体の中でどう機能しているかまで含めて、初めて「良い演奏」になる。
昨日のコンサートは、その当たり前だけれど忘れがちなことを、静かに教えてくれた。
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